(前回 からの続き)
最後もこち亀を参考にしてみましょう。諸富の伝統工芸「諸富家具」を如何に次世代へと伝承させるか?伝承のために出来ることは何か?について探っていきます。
3. 復刻家具を生産して情緒的な価値を訴求~諸富に生きた先人の知恵を拝借~
- こち亀概要(コミック第175巻「プラモの時代の巻」)
絶版したプラモデル(佐倉城)を復刻すべく、知り合いの会社倉庫から金型を見つけ出す両さん。プラスチックを自ら金型に流し込んで佐倉城プラモデルを復刻し、その後も様々なプラモデルを発案していくのであった。
コミック第175巻 P133 より引用
懐かしのプラモデル。経緯は不明ですが、このお話では、城好きの大原部長が佐倉城のプラモデルを探していました。そして復刻したプラモデルを大原部長に渡したシーンがこちらです。
コミック第175巻 P136 より引用
とても喜んでいますね!堅物の仕事人間である大原部長が、勤務先でお城のプラモデルを持って満面の笑みを浮かべています。
この事例から考えられるのは、「過去の商品を復刻させることには価値がある」ということ。そして復刻とは、埋もれてしまった先人の知恵を、再び現代の人々に広めるということ。つまり、伝承行為そのものと捉えることができます。
歴史溢れる「諸富家具」においても、復刻という少し変わった切り口から、大事な世界観を次世代へと伝承することができるのではないでしょうか。
そんなことを考え、諸富に住んでいた先人による「特許文献・実案新案文献」を2件発掘してみました。例えば現代風にアレンジしつつ復刻することで、先人の知恵を拝借した素敵な商品が誕生するかもしれません。
注:権利の存続期間は、特許権が出願から原則20年、実用新案権が出願から10年。よって、ここで紹介する案件は全て権利が存続しておらず、復刻しても何ら問題がないと考えられる。
高さを調節できるテーブル:実公昭60-13377(古賀義浩 氏)
出願日:1981.3.16 考案者:古賀義浩 氏 J-PlatPat リンク
住所:諸富町大字徳富50-1
実公昭60-13377
裏返して遊戯面13を表にすると、麻雀卓になるテーブル。
身の回り品収納家具:実全昭58-171033(本村竜教 氏)
出願日:1982.5.10 考案者:本村竜教 氏 J-PlatPat リンク
住所:諸富町大字山領15
実全昭58-171033
洋服やネクタイ等を収納できる家具。天板2にはアーム4が取り付けられ、「7本前後のハンガーを吊下出来る」とのこと。
嶄新机兼用書庫:特許第17540号(松本浅一 氏)
出願日:1909.8.24 発明者:松本浅一 氏 J-PlatPat リンク
住所:佐賀市呉服町30番地
こちらは諸富の方ではありませんが、現代においても需要がありそうな発明と感じたためご紹介します。出願時期や住所の情報から推測すると、佐賀市柳町で活躍した生花師、去風流最後の家元「松旭堂露山(松本浅一/1871-1940)」による特許と思われます。
特許第17540号
書庫1の蓋扉5を開くことで、机としても用いることができるというもの。机として使用しない場合は蓋扉5を閉じておけば、書籍の劣化を抑えられるかもしれません。
あとがき
3記事にわたって随分と好き勝手なことを書かせていただきました。烏滸がましい限りです。地域団体商標の活用、そして地域ブランド「諸富家具」のブランド力向上に向け、何かの参考になりましたら幸いです。
ところで昨今は「VUCA(*)の時代」などと言われ、生き方や考え方について、どこか不安定で悩ましい毎日かもしれません。しかし、変わらないものもあります。
それは「木」への安心感。家具等に用いられている「木」には、不思議な安心感があります。
社会や環境の変化に戸惑うことがあったら、氷河期等の様々な地球イベントを乗り越えてきた大先輩(**)を「止まり木」として、人類は安らぎを貰うのがよいのかもしれません。
(*) Volatility(変動性)Uncertainty(不確実性)Complexity(複雑性)Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った造語。社会やビジネスにおいて、将来の予測が難しくなる状況のこと。
(**) 人類の祖先は約700万年前に誕生。一方、木は約2億年以上前から地球に存在していたとされる。
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(2022年10月7日更新)
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