こち亀シリーズ第6弾です。
これまで、佐賀県が誇る伝統工芸「諸富家具(リンク)」「有田焼(リンク)」や、西九州新幹線開業に沸く武雄市の「武雄温泉(リンク)」「西川登竹細工(リンク)」を取り上げました。
今回のテーマは、佐賀県武雄市の伝統工芸「弓野人形」です。
こち亀には人形にまつわる話が多く登場しますが、中でもちょっと異端なお話を取り上げてみました。地域ブランドを育てるにあたり、重要となる考えがにじみ出ているためです。
それでは早速みていきましょう。
地域ブランド ”らしさ” を大事にして育てていく~突飛な「人形」を創るのは得策ではない~
- こち亀概要(コミック第58巻「人形アイデア勝負の巻」)
知人であるおもちゃ工場の立石から相談を受けた両津。「社運を賭けたおもちゃ」として紹介されたのは、男子高校生制服シリーズの人形であった。「こんな物だれが買うんだよ!!」とツッコミを入れつつも、持ち前の人脈や発想力を活かし、新たな人形のアイデアを次々と試作していく。
コミック第58巻 P16 より引用
手当たり次第にアイデアを人形化していく両津。他にも「信玄くん」「しゅわるつねっがぁくん」なども登場します。ネタとしては面白いですが、人形作りとしての「コンセプト」や「誇り」のようなものが感じられませんよね。これでは弓野人形の歴史や素朴さに愛着を持っていたファンの心も離れてしまいそうです。
こち亀の事例を見て思うのは、”らしさ” を大事にすべきということ。他の要素と掛け合わせて新たな領域へ進むことは大事ですが、地域ブランドとして育てていくためには ”らしさ” を忘れてはいけません。他者との協働を図りながらブランドを育てていく場合においても、”らしさ” は重要視すべきです。
例えば弓野人形における協働事例として、現代アートの表現を取り入れた「招き猫」があります。弓野人形の特徴である「素朴さ」「親しみやすさ」が溢れる素敵な作品ですね。ふるさと納税の返礼品にもなっています。
弓野人形/江口人形店/猫の誘いLINES (Multi) – NPO支援|ふるさとチョイス HP より引用
ところで、人形等の商品外観を保護する知的財産権として「意匠権」があります。
人形分野における意匠登録事例を1件紹介しましょう。
「見た目」を保護する意匠権事例~和紙人形~
意匠登録第1634089号:室内装飾品 J-PlatPat リンク
出願日:2018.10.25 権利者:個人
意匠登録第1634089号 より 左:正面図 右:使用状況を示す参考図
こちらの意匠は、和紙人形と植物標本のコラボ作品「着物ドールリウム」です。日本の伝統である折り紙・和紙について想いが溢れるフラワーデザイナーさんによって創作され、その名前「着物ドールリウム」は商標登録もなされています。
なお、実際の商品は彩色が施された素敵な人形です。詳細は以下リンク先をご覧ください。
<参考> 着物ドールリウム®︎(リンク)
地域ブランドの名前は「地域団体商標」で保護:福岡県「博多人形」
ところで、福岡県の伝統工芸「博多人形」は、名前が「地域団体商標」として登録されています。歴史ある「博多人形」について人形分野で不正に使用されることがないよう、商標権にて保護をしているのです。
商標登録第5009422号
歴史溢れる地域ブランドについては、そのブランド力に便乗したい第三者が同じ名前を使用したくなるものです。その様な場合に備えて大事な名前を保護すべく、商標権の取得を検討してみてはいかがでしょうか。
地域団体商標の概要や取得のメリットについては特許庁HPをご覧ください。
地域団体商標制度とは|特許庁HP
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